REENAL 発掘・解体“人”

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REENALがREENAL的発想で「人」「プロダクツ」「イベント」などをキュレーションします。
もちろん、ここから新しい企画も始まるかもしれません。


幸流 小鼓方 曽和 尚靖

【プロフィール】
昭和48年10月24日生祖父・(人間国宝) 父・に師事
6歳6月6日より稽古開始。10歳「小鍛冶」にて初舞台。13歳「菊惣童」にて初能以後、平成7年12月に「翁頭取」「石橋」「乱」「道成寺」を披く。代々小鼓の名手を輩出する家系に生まれ、幼少の頃から“京の尚靖”と呼ばれ、常にプリンス的な存在として期待されてきた。その類いまれな才能と日々の精進により、繊細かつ大胆な音色を奏でる非常に感覚派的な小鼓奏者として、高い評価を得ている。現在、京都を中心に、札幌、東京、甲府、福井、神戸、岡山など、日本各地で教室を開き後継者育成にも力を入れている。また、「わかりやすくておもしろい」をモットーに活動を行っている能楽若手グループ「心味の会(こころみのかい)」のメンバ-として、ワークショップを各地で開催したり、平成11年にはスペインマジョルカ島のポレンサ音楽祭に参加するなど精力的な活動を行い、能楽の普及、芸の向上にも勤めている。この他、毎年、京都コンサートホールにて開催されてる同明会主催の「囃子堂」では企画、構成、出演などマルチに才能を発揮している。
“美しく・丁寧”に、爽やかなきれいさをモットウに鼓と向き合う能楽師である。
>> オフィシャルサイト“プチ・鼓堂”

インタビュー写真

REENAL(R):記念すべき第1回目の発掘人は、能楽師 小鼓方の曽和尚靖さんです。

曽和(S): こんにちは。よろしくお願いします。

R:では、さっそくですがこの世界に入られたきっかけを教えてください。

S:やはり、鼓奏者の家庭に産まれ育ったという事でしょうね。小さい頃から鼓の音を聞いてオモチャで遊ぶ様に鼓に触れてましたので、気が付いたらこの世界が大好きになってました。勿論嫌になった事もございません。

R:正式にお稽古を始められたのはいつ頃からですか?

S:6歳の6月6日(数えで5歳)ですね。
昔から6歳の6月6日からお稽古を始めると上手になるといわれてるんですよ。“験(げん)かつぎ”のようなものですね。
でも我が家の場合は楽器があるので、それがしっかり持てるようになるのが6歳くらいという事かもしれませんね!

R:曽和家は代々鼓の演奏家で、お爺様は人間国宝でいらっしゃるそうですね。

S:はい。そうなんです。

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R:歴史あるご家庭に産まれた事でプレッシャーを感じませんでしたか?

S:元々は無かったですね。純粋に鼓が大好きで打たせてもらう事が幸せだったんです。
ただ、祖父や父の真剣な姿をみているうちに、だんだん好きだけではいけないなと感じるようになってきました。二人のようなスタンスになっていく為には、プロの演奏家としてもっと真剣に目標も高くもち、お舞台をきっちり務めていかなければいけないなというプレッシャーを感じるようになりました。ですから年々舞台に対してはシビアになってきていますね。

R:なるほど。

S:最近は、お舞台に対して真剣になればなるほど、どうすればもっと多くの方にお能を見て頂けるかを考える様になってきました。
といいますのも昔は普通に能を知ってる方が多かったのですが、
今はまったく逆で、「能って難しい!」「そもそも、どこでやっているの?」
と思ってらっしゃる方がほとんどで、お能離れになってます。

ですから、まずはしっかり自分の芸を磨く事。
そして、少しでもお能に親近感を持っていただく為に、お舞台以外の場所でも、鼓の知識をお話したりワークショップを行ったりしながら、僕というキャラクターを全面に押し出していこうと考えています。

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R:では、舞台について質問させていただきますが、舞台に立つ時の心構えみたいなものはありますか?

S:僕たちは依頼業なので、ニーズに応えられる為に日夜努力しています。
能のお舞台は、仕手方(してかた)と囃子方(はやしかた)で構成されているのですが、
主役を務める仕手方を、しっかり引き立てる(囃子したてる)バックバンドでいたいと思います。
お仕手が出て来られたら見えてるのに見えて無い。聞こえてるのに聞こえて無い。
そんな存在の小鼓方でいたいですね。

R:どのような演目がお好きなのですか?

S:新作よりも古典の方が好きですね。
古典であっても、演目やお客様の雰囲気に合わせて、間を短くしてみたり長くしてみたりアレンジを入れる事もあるんですよ。

R:それは、事前に打ち合せをされるのですか?

S:そうですね。まだこの世界では若手なので難しい時も多いのですが、できる限り自分の意見を言う様にしています。少々生意気だなと思いながらも、こちらも毎回真剣勝負ですからね!

こうやって、お舞台を客観的に見れる様になると更に色々な事に挑戦してみたくなり、自分たちでイベントを立ち挙げるようにもなりました。

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R:イベントですか。それは、舞台とはまた違う世界ですか?

S:そうですね。真剣さは一緒ですが、やはり少し違いますね。
こちらは、出演が囃子方だけ構成されてるイベントで“囃子堂”といいます。
お陰様で今年で6年目を迎えさせて頂く事になりました。

このイベントでは、舞台演出・構成から、ネーミング、チラシ制作など多方面を担当させてもらっています。全体の流れを想像し、お客様側の視点で展開を考える事、また、それを想像しながら自分自身もプレイヤーとして舞台に立つ事のおもしろさを発見できてとても新鮮ですね。

R:色々と楽しみが多いのですね

S:そうなんです。このイベントのポイントはコンサートホールでお囃子を行う事でした。
能楽堂は能を知ってる方しか来られません。コンサートホールも洋楽器を聞かれる方がほとんどです。そこで、“ハコ”が顧客を持いるんだなと気付いたんです。それであれば、発想の転換で、洋楽器を聞く場所で和楽器を奏で独特の情緒やシチュエーションを感じてもらい、コンサートホールに根付いてる人が能に触れるきっかけ作りが出来ればと思いました。

他にも、僕が特に力をいれているのがチラシ作りです。やはりチラシが一番イメージを伝えやすいのかなと思います。
例えば、イメージカラーで言いますと、黄色だったらかわいらしいイメージなるなとか、赤だったらお固いイメージだけどマニアには受けるかなとか、演目に合わせて毎回神経を使いますね。
そういう細かい点ひとつひとつを擦り合わせて、統一感を図り新しい世界観を作っていってます。

R:そうですか。舞台の上だけでなく、他にも様々な演出効果を考えておられるのですね。次回公演のテーマはお決まりですか?

S:「源氏物語」です。
今年は源氏物語誕生1000年記念という事で、京都では関連したイベントが数多く開催されています。ですので、囃子堂も源氏物語をテーマに構成を考えています。かなり、きらびやかな演出になるのではないでしょうか!
しかも今年は京都の送り火“大文字”さんと同じ日なので、お昼間は囃子堂、夜は大文字さんを眺めて京の風流を感じてみてはいかがでしょうか?

R:わぁ!ステキなコースですね。

S:はい。是非いらしてください。

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R:ところで、ステキなお召し物ですがいつもそのスタイルなんですか?

S:そうですね。普段でもお着物で過ごすことが多いですね。
祖父のおさがりがいっぱいあったので自然と着るようになったのですが、だんだん小物にこだわってみたりしておしゃれを楽しむようになりました。
それに、昔から下駄に憧れがあったんです!
ゲゲゲの鬼太郎が下駄を履いてカランカランというてるのが格好エエなと思ってたんです!小学生の時なんかはGパンに下駄で学校に行ってました!

R:Gパンに下駄ですか!!

S:最先端でしょ!
最先端すぎて変わってると思われてたかもしれませんね。笑

R:お着物と言えば、舞台の衣装はどのように決められておられるのですか?

S:お能の世界は衣装を装束といいます。舞台衣装が各家で揃えられて、お舞台で使用致します。装束だけでなく、楽器なんかもですね。わたくし共は楽器とは言わないで敬意を表してお道具といいます。演目で変えることは装束だけでなくてお道具も変えます。お婆さんの演目は静かな音色のお道具、若く美しい女性が舞う演目は華やかな音色のお道具と演目よってお道具や音色を変えます。
そして、わたくし共の衣装は黒紋付きです。囃子方は装束は着けませんが裃や色紋付き等を着る時があります。勿論、わたくしの持ち物です。お下がりもありますが(笑)。装束や道具は代々受け継ぎ大切に守って行くものです。お能の世界では装束より大切な能面(おもて)が最たるものでしょうか?
小鼓方のわたくしは勿論、小鼓が命の次に大事なものといえますね。

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さて少し話が戻りますが、曽和さんは舞台以外でも、能を広げるために様々な活動をされているそうですが?

S:はい。
「プチ鼓堂」と題して、カフェや町屋で小鼓のワークショップを行っています。ここには、いろんな年齢層の方も来られますし、外国の方も参加される事が多いですね。日本の伝統芸能とは関係ない所で、小鼓を「ぽん」と打つことによって、一瞬にしてその場の空気が変わり、なんとなくそれらしい和の空間ができるんです。そのミスマッチ感がおもしろい空間となりみなさんに親近感を感じてもらい易くなります。そこから鼓に興味を持ってもらいお舞台にも来て頂ければ嬉しいですね!

R:確かに、そういうイベントがあると皆さんが身近に鼓の魅力を感じれるでしょうね!

鼓...そして能の世界の普及を常に考えてらっしゃるのですね!

S:鼓から、いろんな事を感じて繋がっていく。
鼓があるから、いろんな人とも“お知り合い”になれる。
つまり、僕の場合、人とふれあう為の媒体が“小鼓”なんです。

鼓無しでは僕ではないですし、鼓をやってる方ですね!と言って頂けたり
鼓といえば、曽和さんですね!と言ってもらえるようになると嬉しいですね!

R:最後になりましたが、小鼓を愛してやまない曽和さんの今後の目標をお聞かせください。

S: まだまだ他の業界の方にお会いする事は正直恐かったりしますので、どんどん多方面に出向き僕という人間を知ってもらい、色んな人に出会っていく中で自分自身をもっと大きく成長させていきたいと思います。
また、マニアックな人間を今以上にとことん追求したいと思っています。
だからといって近寄りがたい先生になるのではなく「尚ちゃん、がんばってるね!」と気軽に声をかけてもらえるような、
いつまでも、みなさまから愛される囃子方でいたいと思います。

今後も、スマイルスマイルで、日本中、世界中を駆けめぐりたいと思います。
みなさま、いつでもお声をかけてくださいね。

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