REENAL 発掘・解体“人”

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REENALがREENAL的発想で「人」「プロダクツ」「イベント」などをキュレーションします。
もちろん、ここから新しい企画も始まるかもしれません。


幸流 小鼓方 曽和 尚靖

【プロフィール】
福岡出身。同志社大学 文学部卒業。
故 河村 信重(観世流シテ方 重要無形文化財保持者)と結婚後、河村能舞台の運営に携わり、「女性のための能を知る会」を20年近く続ける。 能を見たことがない人や若い世代に向けた「能楽おもしろ講座」を平成8年より開始。修学旅行生、外国人、一般の利用は、今までに12万人を超え、 昨年だけで2万人以上が受講をしている。 カナダ、エジプト等、外国大使へのレクチャーも実施。 京都市生涯学習室、山形県生涯学習室、宝塚国際交流協会での講演会や、 京都駅ビル屋上庭園でのイベントなども手掛ける一方、 スカイパーフェクトTV「能の旅ごごろ」シリーズなどに出演。 その他、日本全国各地にて、ワークショップ及び、講演会に参加。 京都精華大学アニメーション学科にて「アニメと能」の特別講義実施。 池坊文化学園教員。 NPO能楽普及協会理事。
>> オフィシャルサイト“能楽おもしろ講座”

インタビュー写真

今回インタビューさせていただくのは、「能楽おもしろ講座」代表の河村純子さんです。
河村さんは能楽師である旦那様と出会ったのがきっかけで能の世界に入られ、日々学生や外国の方を中心に普及活動を目的とした「能楽おもしろ講座」を開催されています。

インタビュー当日は私も長野から来られた修学旅行生(中学生)と一緒に大変おもしろい体験をさせていただきました。

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舞台の説明→能面説明→衣裳説明→お囃子説明と体験→舞台でのすり足体験→能鑑賞の順に繰り広げられるこの会は、約1時間半の間、退屈する隙を与えないほどの盛りだくさんの内容で、河村さんの小気味良いシャキシャキとした解説に、最初はおとなしかった学生さんもだんだん前のめりになり、自然に質問の手が上がり、大きな声で「高砂」を合唱?したり、舞台に上がり慣れないすり足体験に大興奮する場面もありました。

そんな、「能楽おもしろ講座」を10年以上続けられてこられた河村さんに、
この会のポイントや続けられている意味などをお伺いしました。

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 私がこの会のコンセプトにしているのは、「楽しく・優しく・面白く」です。
難しそうで取っ付きにくいイメージの能にどのようにして興味をもって楽しんでもらうか、「伝統芸の試食会」を開いてる気分で、会の仕掛けづくりに日々試行錯誤してきました。たとえば、「ハリウッド映画は3分に1回観客を驚かせる!」という情報を聞いては短いコーナーに分けて盛り上がる場面を何度もつくってみたり、「能って、今で言うミュージカルのようなもの」「世阿弥って今のアイドルでいうとキムタク的存在で...」という風に話す内容も極力みなさんの目線に合わせた内容にすることを心がけました。


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 このような形で始まった会も徐々に口コミで広がり年間100回以上させていただくようになり、お陰さまで10年間続けさせて頂きました。
この間10万人を超える方々に参加していただいたことになりますが、自分が主催している事を忘れてしまう程、毎回とても大きな感動を頂いています。特に小学生のスポンジの様な吸収力にはいつも驚かされるばかりです。

最初はザワザワと落ち着きのない子供達も、1時間半の会が終わる頃には目をキラキラ輝かせ、ちゃんと正座をして大きな声で「ありがとうございました」と挨拶をしてくれます。そんな生徒達の姿を見て「自分が担任になって、今までにこんな活き活きとした生徒の姿を見た事が無い!」と感激してくださる担任の先生もいらしゃた程です。私が伝えさせて頂くちょっとした事で人はビックリするほど変わる瞬間があるのだど、この会を通じて逆に気づかされました。
“人が成長する” そんな瞬間に出会えるのは何より幸せな事です。
この会を誰よりも楽しんでいるのは実は私なのかもしれませんね!

 10年を機に、この会を続けている目的は何かなと振り返ってみたことがあります。
もちろん能の普及が基本にあるのですが、もっと大きなところで、人の持っている可能性をひろげていきたいんだろうなと思っています。人には無限の可能性があります。しかし、最近の子供達をみていると目の前に大きく広がる可能性の扉に気づかず「出来ない」「ダメだ」と自分で勝手に思い込んでしまっている場合が多く、それがニートやフリーターが増えている要因のひとつではないのかなと思う事があります。もちろん、さまざまな要因が重なっているとは思うのですが、この会が可能性の扉となり、自分の世界を広げて自立していくちょっとしたきっかけになれると嬉しいなと思います。

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 この会は、初めて能の世界を体験する方がほとんどです。ですからちょっとした刺激で、今迄あまり意識していないなかった日本的なものに注目してみたり、和の文化の良さを発見できる方が多いと思います。そうすると、改めて自分たちの国について考える良い機会になるかもしれません。

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自分たちの国について考ると、今度はお隣の国の事も考えるでしょうし、さらに世界中の様々な国の事も気になるようになるでしょう。逆にもっと身近な、隣近所や、学校、地域について考えるきっかけにもなるかもしれません。このように、みんな繋がっているのだという意識を大切にする方が一人でも多く増えていくことを願っています。
文化というのは、ご飯ではないので、これを食べないと死んでしまうという物ではないのですが、このような気づきを感じる上では、やはり必要なものであると、私は感じます。

600年の歴史をもつ能が現代まで引き継がれてきたのは、それなりの理由があるはずです。能のテーマは人の心や魂です。恋、恨み、嫉妬、親子の情。当時の人達も私たちと同じシーンを見て涙したのかもしれません。
一見退屈で難しいと敬遠されがちなこの世界ですが、能楽おもしろ講座を通してその中のきらっと光るものを自分の中に見付けてもらえたらなと思っています。

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