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昭和3年に打ち立てられた「建学の精神」に対して、現学長が立てた4つの柱。そのなかで、他の大学には見られないこの「楽しい生き方」。それは教育カリキュラムや社会や企業との連携のなかで確実に具現化されている。
企業や社会の今日的課題を正確に把握し、共に成長を続ける大阪商業大学
大阪商業大学さんに、インタビューを行いました!
【インタビュー】
南方 建明(総合経営学部長/教授/リエゾンセンター長)・粂野 博行(総合経営学部/教授)(敬称略)

南方さん:大阪商業大学は平成12年4月に「エクステンションセンター」を開設し、平成20年にそれを改組する形で「リエゾンセンター」を設置しました。
リエゾンセンターの具体的な使命は、
『社会と連携した起業教育』、そして
『本学と社会との連携による地域活性化』
です。
前者は社会からの支援を受けた教育であり、後者は本学の知的資産の社会への還元であって、本学と社会が双方向的に刺激しあいながら、相乗効果を得ていきたいと考えています。
まず、『社会と連携した起業教育』についてご説明いたします。この「起業教育」の意味ですが、本学における起業教育は必ずしも起業家育成を目標とするものではなく、起業家精神の育成と起業家的な資質・能力の育成を主たる目標としています、つまり、必ずしも社長を育てる、起業家を育成するという意味ではなく、そういう資質と能力を持った人物を育てる教育と位置づけています。
『社会と連携した起業教育』は、「社会と連携した本学の学生に対する起業教育」と、「高等学校と連携した高校生に対する起業教育」からなります。特に高校との連携については、どこの大学にも負けない、日本有数の大学として力を入れている部分です。高校生の段階から、しかも商業科だけではなく普通科など様々な学科の生徒も含めて、高校の先生方がそれぞれの高校で進められている起業教育を本学が支援しています。具体的には、起業教育研究会というプログラムがあります。これは、本学が主催する全国の高校の先生方を対象とした研究会ですが、毎年一泊二日で起業教育に関する情報交換をしたり、本学教員と高校教員とで作ったテキストの使い方を伝授したりといったことを実施しています。高校においても起業教育を進めているところはたくさんあり、本学のプログラムは普通科、商業科、農業科、工業科など、様々な学科の様々な科目を専門とする先生方に参加していただいています。そこで起業教育に関する情報を提供し、起業教育に関する情報交換を行っています。
また、全国高等学校ビジネスアイディア甲子園という高校生を対象としたビジネスアイディアコンテストを実施しており、平成20年度には全国の高校生から新しい商品やサービスのアイディアの応募が4762件ありました。
「本学の学生に対する起業教育」という点では、OBPコースという起業教育に特化した特別コースを設置しています。大学院では平成20年度に「経営革新専攻」を設置、まさに起業教育に特化した大学院だとご理解いただければと思います。
起業教育の具体的な内容としましては、社会の様々な問題を発見し、その解決策を考え、問題の解決に向けて行動するフィールドワークを、様々な組織と連携して展開しています。当初は地元の瓢箪山商店街の活性化事業から始まったのですが、現在は商店街だけではなく、企業、NPO、観光ボランティア団体等と連携しています。このような連携を通じて、大学で学んだ理論を現実の社会で適用していく実践教育、実学教育を進めています。
また、本学学生を対象に「大商大ビジネス・アイディアコンテスト」を毎年実施しており、約700名の学生から新しいビジネスアイディアや新しい商品・サービスのアイディアの応募があります。
98年からは主に東大阪の企業経営者をお招きして、学生に経営現場の生の声をお聞かせ頂く「地域社会と中小企業」という授業を展開しています。これまで100人以上の経営者の方々においでいただいております。東大阪市に立地している大学としての特色を活かして、理論だけではなくて経営者の生の声を学生たちに伝えたいと始めたものです。
次に、『本学と社会との連携による地域活性化』についてご説明します。
これは大きく3つに分かれるかと思います。
一つ目は「地域との協働による社会的問題の解決」です。
地域は様々な問題を抱えていますが、学生・教員・地域が一緒になって、その問題の解決を見出す取組みです。
二つ目は「知的資産の社会への還元」、三つ目に「起業家育成」ということになろうかと思います。
まず「地域との協働による社会的問題の解決」ですが、これは地域や企業にフィールドを提供いただき、そのなかで、学生の行動力や創造力を活かして、何らかの形で地域のお役に立ち、延いては地域活性化に貢献するということです。
二つ目の「知的資産の社会への還元」については、様々な公開講座等を実施していますし、クリエイション・コア東大阪の大商大リエゾン・オフィスでは、経営のご相談も承っています。
三つ目の「起業家育成」については、創業実践セミナーを毎年実施してきました。また、文科系の大学では数少ないと思いますが、大商大アントレ・ラボというインキュベーション施設も設置しています。さらに、起業家支援として、優れたビジネス・プランを基に会社を設立する起業家に対して「ベンチャー投資制度」という制度を設けています。
このようなところがリエゾンセンターの全体像でありまして、非常に幅広い活動を行っています。他大学のリエゾンセンターはもう少し産学連携に絞っておられるかもしれませんが、本学では「起業教育」のなかの一部として産学連携があるわけです。
本学は経済学部、総合経営学部だけの社会科学系の大学です。専任教員が約100人で、そのうち約70人が経済学や経営学を専門とする教員です。
ただ、本学の教員は理工系が専門ではありませんので、企業あるいは起業家と連携して、自らの理論や技術を製品化することによって社会に貢献したいと考えている教員は少ないと思います。
では本学における産学連携について改めて考えてみますと、あくまで「起業教育」を中心に据えるということになろうかと思います。
本学の起業教育は、座学だけではなく、実学教育、フィールドで学生を教育していることが一つの特色です。商店街や企業に学生と教員が出かけて行き、問題を発見することから始まって、解決策を考え、考えるだけではだめなので、その解決策を学生の手により実行します。地域あるいは企業にはそのような連携のなかで学生に教育の場を提供頂き、本学からは学生の行動力・創造力、また本学教員の専門知識、そういった知的資産をご提供頂いた地域や企業に還元していく・・・というのが本学における産学連携と考えています。
今回のプログラムの中では、例えばこの素材を使って新しい用途を開発できないだろうか、新しい製品を開発できないだろうかというようなテーマを頂くことが出来れば、学生と一緒にチャレンジしますし、そういうフィールドを与えて頂いた以上は「考えましたけれど結局何もアイディアが浮かびませんでした」では済まないわけで、教員も真正面から取り組みます。
取材チーム:まさに今おっしゃった経営者の感覚を持った「起業家精神を持った社員」をどうやって育てるということが、産業界でも大きな経営課題になっています。

南方さん:本学が起業教育を特色としていることは、本学の伝統と実績を踏まえたものです。今年開学60周年を迎える本学の建学の理念は「世に役立つ人物の養成」です。つまり、開学以来そういう実学教育を大学の特色にしてきました。実学教育とは、世の中に出てすぐに役に立つ教育という意味ではなくて、社会にある様々な問題を発見し解決策を考え行動する、そういう能力を養成する教育であるというように捉えて60年間続けてきました。小さな大学ではありますが、実は卒業生の中で現役の社長が1200人以上おります(帝国データバンク調べ)。定員1000人の大学ですので、定員を上回る現役の社長がいるということ、これは全国に約770の大学がある中で20校もないだろうと言われています。それから、ベンチャー企業において役員・管理職になったランキングでも全国4位になっています(ザ・大学ランキング〈2003年度〉/週間ダイヤモンド調べ)。
エクステンションセンターができたのが2000年の4月と申し上げましたが、この頃からもう一度建学の理念「世に役立つ人物の養成」に立ち戻って、実学教育、起業教育に力を入れなければ、私どもはたくさんの大学の中で埋没してしまう、という危機感がありました。フィールドワークも含めた起業教育が、私どもの大学の特色ですし、これからもそれを明確化していくつもりです。
学長が平成9年に就任したときに、建学の理念「世に役立つ人物の養成」を具体化して、「基礎的実学」「柔軟な思考力」「思いやりと礼節」「楽しい生き方」の四つの柱を設けました。
取材チーム:楽しい生き方というのはすごいですね。
南方さん:おそらくこういう柱を設けている大学は本学しかないと思います。
取材チーム:この三つを満たしている人は楽しい生き方をしている(笑)。
まさに建学以来の精神に基づく連携を展開されていることがよく分かりました。
ただ、そんななかでも特に企業にとっては短期的な時間軸にならざるを得ない部分もありますが。
南方さん:短期的な成果を求めるのは、経営コンサルティング的な考え方であって、なかなか教育とはマッチしないですね。教育というのは長い目でみていただかないといけませんし、私どもも学生を参加させている以上、学生の能力開発という点で成果を上げなければなりません。幸い現在連携頂いている企業や地域は長い目で見て頂いていますし、短期的な成果を求めるのではなく、もう少し本質的なテーマを頂いているように思います。産学公連携事業「瓢箪山地域活性化事業」はもう数年実施していますが、空き店舗があるのでこの空き店舗を使って学生さん何かビジネスをしてくださいというようなことではなくて、何故空き店舗が増えているのか、一から調べましょうというところから、本学と商店街が一緒になって取り組んでいます。
ですから企業との連携においても、「これどうしたら売れるの?」という短期的な成果を求めるテーマは、私どもにはそぐわないと考えています。
取材チーム:そこは貴学が引き出されていると思うのですね。入り口の段階でご尽力されて、本質的なテーマを共有するところまで議論を尽くされていると思いますが、実はそこってすごいノウハウなんじゃないかと考えているのですが。
南方さん:どうなんでしょうね。短期的な成果を求めるというよりは、学生と接する事によって時代の流れだとか雰囲気を掴むことの方が重要だという社長さんが多いですね。まず自分が学生の中に入っていき自らに刺激を与えるという考えでご協力いただいています。

粂野さん:公開講座を10年以上開催し、その中でいろいろとお話を頂いていますが、少なくとも講座にいらっしゃる社長さんは自らを磨こうという意識の高い方が多いですね。そんな方々にお話をもっていきますと、やってみたいこともあるし、気になっているところがあるので一緒にやってみようじゃないかということになります。短期的な成果を求めていらっしゃる企業も多いとは思うのですが、そういう方ばかりではないと思いますね。
私は中小企業と連携させて頂くことが多いのですが、皆さんのお持ちの製品を学生に投げて頂いて、どういう活用の方法があるのか、どういった売り方があるのかを学生と一緒に考える。そういうことを繰り返しながら、学生の発想を活かして頂いていますね。
具体的にはまだ製品化までには至っていない試作品等について、若者という消費者として、こういう使い方もあるのではないか、こうしたら楽しいんじゃないかと一緒に考える授業を行っていますから、そういう方向でしたらご一緒に取り組めるかもしれないですね。
取材チーム:建学の精神を共有し、長い目でご協力いただくことができる企業はじめ各種団体を募集いたします。