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大阪府立大学

「日本でワークシェアリングが進みにくい本当の理由がわかったような気がします。
これまで私の見解は以下の3つでした。
日本のホワイトカラーにおいては
1. 個々人のレベルで仕事の体系化ができていないので分担しにくい
2. 仕事に属人的要素が強いので他の人では担いにくい
3. 最後まで自分で仕上げたいという“職人魂”が他の人に任すことをよしとしない
だから、ワークシェアが進みにくい。
最近、それ以上の問題が根底にあるのではないか・・・と思い始めました。
もしかすると、日本企業の多くでは、既にワークシェアをしているのかもしれないと。
しかも、非常に非効率的なワークシェアを。
だから、改めてワークシェアという掛け声があっても進まないのではないかと。
1人でやれることを5人でやっていませんかね。」
(「1人の仕事を5人でやっていないか」柴田 励司 より抜粋)
上記は、日本の企業のみならず大学にも当てはまる点が無いとは言い切れない「仮説」であり、そして、今回の取材でその解の糸口を探る事ができたと感じている。
その先駆性が、大阪府立大学には既に芽吹いている。
初めて出逢った「壁の無い公立大学」。

大学曼荼羅

大阪府立大学さんに、インタビューを行いました!
【インタビュー】 奥野 武俊(理事長・学長・工学博士)・菅野 昌志(理事(産学官連携 社会貢献担当)・産学官連携機構長)・巴月 康彦(産学官連携機構 リエゾンオフィス・統括コーディネーター)(敬称略)

インタビュー写真

菅野さん:本学は平成14~15年頃から大阪信用金庫さんをはじめ、金融機関さん主導で中小企業さんを700社ぐらい回りました。その意味では、ある程度中小企業さんのニーズの整理は出来ていると思っています。

奥野さん:ひとつの契機は大学の法人化前後にあったのですが、菅野さんのような企業出身者に大学に来て頂いて、府立大学として産学連携をどう進めるかを考える中で、先ず企業さんが何を考えて、何を課題だと思ってらっしゃるのかを把握すべきだということが話題になりました。それで、最初に信金さんと連携したのです。信金さんって、町の方々のニーズを肌で感じていらっしゃるじゃないですか。そこの外回りの人たちに課題を把握してもらって、「府大の**先生のところに行ったら相談に乗ってもらえるよ」と言ってもらう、それを仕掛けたのです。それはすごく効果的だったので、徐々に拡げて、成功事例を積み重ねてきました。

奥野さん:最近はどこの大学でも、大手銀行とも連携されていて、本学も当然連携していますが、多くの場合は資金の問題の相談にのることが多いですね。でも最初は資金ではなくて、課題把握だったのです。そこから、連携プレーが生まれて、成功事例になりました。
巴月:より具体的な活動を展開してきたのが大阪信用金庫さんであり、当時の八光信用金庫さんでした。それぞれの得意先さんを、我々のコーディネーターと一緒に回ったのです。
菅野 もうひとつ話をさせて頂くと、企業さんのニーズがあって、こちら側に先生の品揃えがあったとした時に、直結するようなソリューションは簡単に見つかりません。ここにコーディネーターが入る。つまり、トランスレートをしてソリューションを作っていくのが実態なのです。

取材チーム:色々企業さんのお話を伺っていますと、一番多いお悩みはやっぱり事業承継ということになるようです。先代さんから次世代へと、親子のケースが多いですから若干歳も離れているなかで承継しようとされているのですが、本当はこの間に暫く継いでくれる人材が要りますと。ただ、一番信頼できる社員の方はずっと工場のなかで叩き上げでやってきましたと。もうちょっとマネジメントのことを分かって欲しいし憶えて欲しいと。こういう人事のご相談って非常に多いんです。

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奥野さん:そこは私たちも気がつきました。一番多い悩みですね。私たちが500社以上回ったときに感じた事がそれです。大きな悩みは実は技術の問題じゃない。技術は第二と言われました。でも大学がすぐに提供できるのは技術的な事ですから、まあそう言わないで・・・とやってきたところもあるのですが、中小企業さんを育てようと思うと、大学はそこを何とかしなければ・・と思いました

取材チーム:ピンポイントで、今回はそこだけやりますというような大学さんもあられますね。

奥野さん:そうですか。本学では(株)FUDAIというベンチャー会社を作って、年間20〜30名の後継者育成をやっています。大学の経済学部などが直接的にこの問題に取り組むのは難しいと考えて、名誉教授の方とか知り合いの方とかに相談した結果、ベンチャーを立ち上げることにしました。実際そこで講義をしているのは本学の先生だったりするわけですが、最近結構成績も挙げていますので、そろそろ大学が直接展開すべきタイミングになっているかもしれません。

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菅野さん:プログラム受講生の累計は100名を超えています。成果報告会を毎回聞いていますが、ポイントは何かというと「グループワーク」なんです。自社の課題を出しあって、みんなでソリューションを作るわけですが、そのプロセスのなかで、「うちのオヤジはあかん」という結論が出たりするわけです(笑)。課題解決にかなりの効果があるというのは実証されています。

奥野さん:で、最後は社長が認めるのです(笑)。そして、「うちの重役にするためには、ここへ行って来ないとダメ・・」みたいな発言をする社長も出てきました。ただ、お金の問題と、それに拘束時間の問題があるのです。土日が研修に取られますので、それがバリアになるようです。

巴月さん:ここの修了生は、グループ活動なんかを通してネットワーキングもしています。会社で何かあったときには受講生仲間に相談する。お互いにアドバイザーになりながら、交流を深めているのです。

奥野さん:ネクストステージはそこにあると思いますよ。何か困ったときに相談できるネットワーク。単なる仲間じゃなくてね。ここに本学の先生が、うまくからめば強くなると思います。

巴月さん:相談ゼミと言っていいのかわかりませんが、先生も入ってお互いに切磋琢磨しながら、レベルアップしていこうと、こういう考え方になってくると思いますけどね。

奥野さん:これを始めたときは、社長の息子さんとか、将来を期待している社員を送ってこられました。そのときはスキルさえアップしてくれたら良いと思っていたので、資格などには無頓着でした。しかしながら、ここで育った方が、具体的に社内改革を進めていくわけです。そうすると、その次には、やはりあるオーソライズされた資格が必要になってくるように感じています。さきほどお話したように、ここを卒業しないと社長になれないという会社が出て来たのですが、それって言い換えれば、どこかで勉強しているだけではダメというようなことですよね。ですから、大学が何らかの資格を与えるところまで行かなければ・・・と考えるのです。簡単に、すぐには出来ないかも知れませんが、今後はこのようなプログラムを、大学がやるようになればいいと思います。

菅野さん:現状は受講生集めには大変な労力が必要で、いろいろお願いして回っていますので、恐らく貴社にもお世話になっていることと思います。

取材チーム:まさに、今の企業さんの課題認識はおっしゃる通りだと思うんですが、そんな中で、府大さんとしての、府大さんならではの打ち出し方というのがなんとか出来ないかなというのが我々の質問でございます。

奥野さん:とても難しい質問なので、「府大さんはこれからどのような課題を持っていますか?」というこにしますと、これからの課題は、「いかにシーズを次々と出していくか」だと思います。それを可能にするのは、基礎科学をしっかりすることです。それを展開していくやり方を考えないといけないと思っています。つまり、すぐに成果になるものばかりやっていたら最後は枯渇しますから、時間がかかっても自由に研究が出来る環境を作らなければなりません。それが、国公立大学がやらなければならないことだと私は思います。つまり、先生方に自分の興味で研究に取り組める環境作りですね。一番の課題はそれだと思いますよ。

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巴月さん:そこに大学の存在意義があると思いますね。

取材チーム:大学とおっしゃいましたけど、これは産業界にも言い換えられることなのではないでしょうか。

奥野さん:スパンとかいろいろあるので、企業さんは少し違うと思いますよ。ただ基礎研究を切った企業さんの中には足腰が弱っている企業さんもあるかもしれませんね。

取材チーム:中小企業さんであっても、全部じゃないですが、口では今年儲からんとおしまいやから先のことなんて考えていられるかなんて言いつつ、社会の中の我々みたいな意識をお持ちのところは多いです。

奥野さん:産学連携への取組みを本格化させた当初、収益につながるようなシーズを紹介しますから見に来てくださいという案内を出したら、たくさんの方が来られました。今でもけっこう集まって下さいますが、当時は珍しかったこともあって、とにかくいっぱい来られました。近隣の会社の社長さんとか、商工会議所の方とか・・・。その方々の話を伺いましたら、「何か儲かる話が無いか」、「ええ話が転がっていないかな」と思って来られているのです。この気持をいかに壊すかが私の仕事でした(笑)。「儲かる仕事がゴロゴロ転がっていたら、誰も苦労しませんよ」とよく言いましたね。私は、そのようなことを話題にするプロセスを通じて、大学と企業との敷居を低くする」ことが大切だと思っていました。「社長さん、そんなに簡単に儲かる話は無いですが、でも大学に来てください・・・」って言うわけです。本音を言いますから、本気で親しくなって、敷居が低くなります。さきほど話したように、信金さんと一緒に回りながらシーズを探すとか活かすということもありましたが、結果的に敷居が低くなって、何かあったときに相談できるようになったのです。大学の責任って、それではありませんかね? 口先で「なんでも相談においで」って言っても敷居は低くなりません。現実に、体験的にそれを知らせるのは、結構大変ですよ。
こんな話があります。私の友人がある会社の技術部長をやっていて、ある製品の納期が間に合わないと夜も寝ずに悩んでいたのです。で、ちょっと話しあって、「一度大学に来てみたら・・」と言いました。でも、良いアドバイスやアイディアがあったわけではありません。彼は、私の言葉を受け止めて、忙しいのに半日ぐらいキャンパスの中をブラブラと回って歩いたのです。その日の夜に、解決策をひらめいたらしいのです(笑)。大学が何かを教えたわけでも、すごい先生に出会ったわけでもないのですが、でも大学に来てブラブラしていたから、生まれたかどうか分かりませんが・・・・。キャンパスという「場」を提供することが、良い結果を生んだと私は信じています。それが大学として社会に提供すべきことのひとつだと思うのです。抽象的で申しわけありませんが、敷居を低くするとか、雰囲気とか、場を与えること・・それが大学の責任だと思っているのです。

取材チーム:空気感を一旦ちょっとずらすというか・・・

奥野さん:大学人のひとつの仕事はそこだと思います。
例えば、大学は先端技術を研究しますが、先端技術の宝庫である携帯電話の作り方を学生に教えません。学生にはその基礎になる学問は教えますが、いかに作るか・・・は教えないのです。携帯電話を実際に開発した人は、大学でその作り方を学びませんでした。もし今の学生に、携帯電話の作り方を教えて、みんながそれを出来るようになった時、世の中に携帯電話なるものはもう無いかもしれませんよね(笑)。つまり、大学で教えるのは、さきほど話した空気感とか、負けないで立ち向かう心とか、必ずできるはずだという気持ちとか・・・だと思います。既にあるものを解析するのではなく、何かを創り出さねばならないときに、それが出来る人に育てたい。その対象は学生だけじゃない。企業人だって同じですよね。大学教育ってそういうものだと思います。
もう一つ、こんな話をご紹介しましょう。工学研究科の学生を育てるときに、そこに例えば看護学部の学生を入れるのです。工学研究科のナノテクを研究している学生が論文を書かければいけないときに、看護学部の学生を入れた異分野ディスカッションをするのです。ナノテクには素人の看護学部の学生がいるのですから、分かるように説明しなければいけませんが、それは、なかなか簡単ではありませんね。そして、考えてもいなかったような質問、例えば「それって病気の患者が・・・どうするの?」などが出てくる。現場に即した具体的な質問が投げられたときに、それを答えなくちゃいけない。そんなプログラムを走らせています。これは本学のような、複数の学部を持っているコンパクトな大学で可能になると思っています。コンパクトですが総合大学で、フランス語をやってる学生も、リハビリ学をやっている学生もいるわけです。同じ学部内の先生や仲間だけだったら専門用語、つまり難しい言葉を使ってもみんな通じますが、異分野、異文化の方がいると、通じません。そこでディスカッション出来たら、どこにでも役に立つ学生として送り出せると思うのです。

取材チーム:実は産業界にもそれが出来る人って少ないですね。

奥野さん:だってこれまでは、そのように育てられなかったですよ。これまでは専門性だけで、ある程度は大丈夫だったのです。でもね、最近は、それでは役に立たなくなって、産業界の経営者は、大学からこんな学生を送ってきてどうする・・と叫んで、ついに突然「もう要らん」などと言うのです。ひどいですよね(笑)

取材チーム:今回のインタビュー内容は恐らく他のどの大学のそれよりも明確では無く、また難解です。しかしながら、冒頭に引用した問題意識に共感頂ける企業の方には決して失望させない連携が待ってます。
公立大学の中で俄かには信じられないほど学部間の壁が無いこと、産学連携におけるひとつの大きな問題点である「大学の敷居の高さ」に早くから気付き、その払拭を図ってきたこと・・・ひとつ一つの事象も今日的な産学連携のモデルとなる得るものばかりであるが、それらはあくまで外形の一部に過ぎません。
産業界の、日本の、根源的な課題解決に向けて、大阪府立大学と何らかのネットワーク上で繋がることをお勧めします。

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