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「学の実化」(学理と実際の調和)-知識を行動に、社会からみえる大学であり続ける-を理念に掲げ、大阪・関西と共に歩む関西大学。
多くの社長を輩出し、多くの教授陣が今なお現場に根ざし、現場と共に歩み続けている。
「産学連携」によって多くの研究が新しい技術、新しい産業を産み、それが現代における様々な課題解決につながっていることは事実であるが、一方でその基盤を拡げていく努力を重ねていくことを怠ることは出来ない。
様々な制度改革のなかで、最早大学といえども短期的な収益や成果を無視出来なくなっているなか、それでも地道な努力を続ける覚悟がここに見える。
関西大学さんに、インタビューを行いました!
【インタビュー】
杉本 隆史(化学生命工学部教授/社会連携部副部長/産学官連携センター長/工学博士)・島貫 未来夫(社会連携部/産学官連携センター/知財センター/地域連携センター/先端科学技術推進/機構 課長(グループ長))・松井 由樹(社会連携部/産学官連携コーディネーター/中小企業診断士/社会保険労務士)(敬称略)
※本インタビューは2009年8月26日に行われました。10月1日付けをもって関西大学境連携部産学官連携センター長は化学生命工学部教授 西山豊が就任致しました。

取材チーム:今回はかなり絞ったメッセージを発していただくこととなりますが。
杉本さん:産学連携のシンポジウムを開催されて、そこでマクロな紹介じゃなく、ここというポイントを絞った紹介をしていただいて、それを事前通知したうえで的を絞ったお客さんを集めたいということですね。じゃあ我々も戦略的に何をテーマに選ぶかというところで、的を外したくありませんね(笑)
取材チーム:関西大学さんは建学の当初から、「知行 合一」(ちこう ごういつ)と謳われ、その後も「学の実化(じつげ)」という言葉で表現されている通り、今の産学連携ではどちらかというと研究成果を実用化しますというところに重点が置かれているなかで、社会とコミットしていきます、そのための実践的な教育を施します、そしてそういうことを社会に役立てていきます・・・ということが根底にあらわれているようにお見受けします。いろんなカリキュラムを見せていただいても、そういう部分を色濃く出されているのかと思っております。そこが一つの糸口になるのかなと思っています。
杉本さん:どこの大学も特許を持つ事自体にはなんの意味もありませんので、知財として守ってきた研究成果をオープンにして、それでもの作りをして頂きましょうというのが産学連携のスタートであったわけです。勿論もともと大学というのは教育研究機関であり、そこから離れた産学連携はあり得ないということも当初から言われてはいたのですが。
社会に役立つ人間を出すのが大学の社会貢献であるという考え方と並行して、先生方の研究成果を社会にオープンにし、それを利用した「もの作り」に発展させるのが新しい社会貢献、社会連携、となってきたのです。でもそう簡単には行きません。人を育てながらもそういう知財を世に出していくというのは・・・
研究を通して教育した学生と共にある特許を取りました。その特許はA社が活用することになりました。でもその学生はB社に就職したい。A社はB社の競合相手である。というと、その就職は相成らんという制約までかけようというのが、実は初期にあった事です。知財というものが取り沙汰されたときに。
でもそんなことはできない。そこで先ず学生に対して秘守義務というものがあることをきっちり教育して、そのうえで、そういうことをきっちり守らないと社会人にはなれないのだということを理解した学生を世の中に広く出していくことです。やっとそこまで来たというのが現状です。
世の中で役に立つ技術力を身につける、そして知的財産というものの取り扱いに関する知識を持った学生たちに巣立っていってもらう。大学の役目としてはそれが一番なのでしょうね。ただこれは本来の業務であり、そういう学生を育てるのは当たり前と言えば当たり前なのですが。それを超えて何かを創り出せるかというはなしなのだと思っています。
取材チーム:ただ、そこのジレンマに悩まされながら皆さん進めていらっしゃるのが現状ですよね。

杉本さん:よく言われる技術移転型、大学の技術を企業へということはよく言われておりますけれども、やはりニーズプル・テクノロジープッシュ、企業さんが何を欲しておられるかをちゃんと集めて、それに対する答えを出しましょうという流れになってきてはいますね。
ただ、企業との共同開発をやらないと結局は成功しないというのは事実ではあるのですが、大学は試作工場にはなれないですね。企業さんの試作工場でもありません。
大学の理念、企業の時間軸、双方を止揚させていくためには、共同研究もしかり、地方自治体と一緒になることもしかり、また公的資金の申請に携わって企業を支援する。我々も一緒になって共同研究をするけど、研究費として公的な資金を導入する、こういうどちらかというと地道なことを重ねていかないと結局はうまくいかないですね。
ただ、そんななかで大学が非常に弱いのは、既に知財として特許を取っている場合にそのライセンシングをするのですが、製品化とその販売には直接関わらないのでロイヤリティをなかなかうまく頂けないのです。その交渉・契約に手腕のあるマネージャーは大学には居ないのです。
企業の研究者と大学の先生とは一緒に研究は進められます。しかし、いかにロイヤリティもなにも払わずに自社化するかということもある意味で企業論理ですから、そこで負けるのです。産学連携がなぜ大学に根付かないかというと、そこで負けるからです。結局は共同研究費としてお金を頂いて研究が進み、先生は論文ができればよし、という考え方がほとんどですね。知財を生み出し、権利化し、それでさらに外部資金を稼いで、また研究を進展させるというのが当初の目標だったのですが、そううまくは回らないですね。
以前にある大学さんが大企業から共同研究費をもらい、成果が実り、「ロイヤリティを下さい」と言った時に、その大企業は「研究費として支払い済み」と答えたという話があります。それが実態ではないでしょうか。
取材チーム:大企業との産学連携ということではそういう問題を孕んでいるというのはよく分かるのですが、関西で進める産学連携となると、中心はやはり中堅・中小企業になっていくと思うのですが
杉本さん:関西の地盤沈下ということも言われていますが、地盤沈下していれば、関西の大学に学生は集まらないでしょう。関西の大学となると本学を含めた関関同立という4校が常にあがってきますけど、今のところ幸いにして学生数が足らないということはありません。けれど、東京の方が良いと言われて東京の大学に全部行かれたら、それこそ地盤沈下になってしまいます。以前にビジネス雑誌にも書かれていたのですが、「大阪とともに強くなる関西大学」であるべきだし、それしか無いと考えています。そういう意味で中小企業との関わりというのはおっしゃる通り重要ですね。
ただ、中小企業には研究費を拠出する余裕はありません。先ずは国や地方公共団体のプロジェクトに応募して、補助金や助成金等を獲得して、それから共同研究する・・・今のところそれがお役に立てる一番確実な方法だと思っています。
一方、中小企業さんにも採り入れやすい研究成果もあります。
ある先生がカナダへ行っておられたときに、向こうの霜害(そうがい)、つまり霜の害を防ぐにはどうしたらいいか?というところから気づかれた研究はかなりの汎用性がありますね。不凍細菌というような言い方をしていたのですが、今では冬野菜の代表の大根、それも捨てられていた葉から不凍ペプチドという機能性物質を取り出し、これを使って色々な用途への提案をしています。この企業さんはこれ、別の企業さんにはこれが良いのではないですか?ということが出来ると思います。
取材チーム:反響はいかがですか?
杉本さん:今いろんなところでお話が進んでいます。それもこれからではあるのですが
取材チーム:いろんな害に強い食材を作ろうとすると、一方で農薬の問題がありますね。行政でも地野菜の普及等の活動をされていますけど、環境変化への抵抗力がひとつの課題になっていまして・・・農薬や化学物質以外の方法で一定期間品質を保持できるというのはひとつの解決策になると思うのですけが。

松井さん:例えばお刺身がスーパーで売っていますよね。あれ、時間が経つと裏の白い紙に、ドリップというのかな、水が貯まります。そうすると、味も落ちますし、商品価値も見た目も良くない。当然消費者の方はドリップが無いものを買われると思います。そういったところに、こういった(天然由来の安全な)機能性物質を使えばよいわけです。色々な切り口があって、いろんな企業さんとお話は進んでいるのですが、この研究の幅の広いのは、例えば冷凍食品の保存材を作る企業さん、またそれを使う企業さん、両方に我々はお役に立てるわけです。
取材チーム:例えば業種軸で、食品関連・外食産業とか、一部薬品業界とか、という形でのお声掛けというのは面白いかも知れません。
一方で、これは全く別の切り口なのですが、東大阪にいきますと社会学部の大西先生のことをみなさんよくご存知で、企業さんのなかでの認知度は相当高いですね。そのあたりをうまく活かせないでしょうか。
杉本さん:もちろん東大阪で大西先生は、まいど教授の愛称で親しんでいただいております。近年は、中小企業を継承する「次世代経営者」を対象とした「塾」を展開されています。
取材チーム:大西先生もそうですし、関大のなかでいろんな地域で活躍されている方は理系文系関係なくたくさんいらっしゃって、色んな企業を見ておられますね。そこで、おたくの企業はこの部分が相対的には足りませんとかっていう目線をお持ちになっているのかなと思いまして・・・それも決して『大学の先生』の目線ではなくて・・・そんな「目利き力」みたいなものをひとつの枠組みにできたら需要があると思うのですが。
つまり、関大の知名度を活かした交流、この輪を広げて行くというのは如何でしょうか。ただこれは関西大学にとって具体的な果実がすぐに得られるものではありませんが。
杉本さん:例えば本学は30万人を超す校友(卒業生)数です。また最近の新聞を見て頂いてもわかるように、関西の校友が関わる企業経営者の数は2位になっています。理系の校友が中心となって「関西大学科学技術振興会」が組織され定期的な活動が行われています。この輪を文系にまで広げ、校友企業が全部ここへ入っていただければすごいネットワークにはなります。
取材チーム:常に社会を見据えて行動されている大学としてのあり方ではないでしょうか。
杉本さん:ただ、これとて一朝一夕に形になったものでは無いのです。関西大学が良くなって来たのは、出口指導(キャリア教育)の充実への取り組みですね。これはあまり表に見えないかもしれないですけれど。
取材チーム:実は再就職支援をされている大学はまだほとんど無いですね。関西大学は関西で一番早かったですよね。
杉本さん:キャリアセンターに「卒業生就職支援室」を設置して、再就職支援を行っています。実質的にはもうずっとやっているのですが。特に理系、我々は研究室という関わりがかなり強くて、卒業後も何かと寄って来てくれます。「会社を辞めました」と言ってくることもありますが、辞める前の相談も非常に多いです。
取材チーム:そのような方々をまた社会で活躍できるように送り出しているわけですね。そのあたりの、校友に社長さんが非常に多いっていうことも含めて、産業界のネットワークというものを、大学初でやります!と。そういう打ち出し方が出来ればなと。
杉本さん:よく先輩の社長からは「お前はそんなこというけど、うちに一人も入って来てくれへん」、と言われています。中小企業の社長さんは卒業生を欲しておられるのです。ところが関西大学は見てくれがよくなって、スマートになって、「来い。来い。」と言ってくださる企業へなかなか就職してくれない。
再就職支援としての窓口は結果的にそんな声にもお応えできればと思います。
取材チーム:実学の世界の中で働かれている卒業生の方々を含めてネットワーキングをしていくことが出来るかも知れませんね。
銀行のお客さまのお話を伺っていると、共通項を探されるというのが初対面ではなかなかうまくいかないですけど、やっぱり同じ出身大学のところに頼るとかですね、そういう方は多いですから、そのへんのネットワークの核になられるというのは、非常に魅力的ですね。

島貫さん:クリエイション・コア東大阪で松井コーディネーターがサテライトオフィスの立ち上げからずっと関わっています。その中で、次世代・二代目の経営者の方を対象にした『塾』を毎年実施しております。この塾には、大西教授をはじめ本学と地域連携協定を締結するりそな銀行さんの全面協力によって実現しました。
100年に一度と言われる混沌とした時代に、経営者の方々も判断に悩むことが山積しているのは我々と同じだと思います。東大阪で関大が育てて頂いているという現況を踏まえて、経営の一助となるような情報交換などコミュニケーションをとって頂くような機会を草の根的にやっていくことがこれから大切ではないかとの思いで企画されています。それを毎年続けているっていうのも関西大学らしさとしてアピールさせていただけるのかと思いますね。
色々な悩みや大学に対するニーズを何でもぶつけてもらえばよいと思います。理系の学部だけでなく、文系学部を含めた文理融合の対応が可能です。それが総合大学である関大の強みだと思います。様々な悩みに対して技術の相談だけでなく、法学、会計学、心理学、文学、経済学、商学、社会学、総合情報学、政策創造学など多彩な教育研究を行っている教員が在籍しております。
本学の先生は現場にどんどん足を運ばれます。来てくださいと待っているような先生はおられません。私も文系出身者ですので、最初この部署に来て理系の先生がどんどん工場に行かれるのを目の当たりにして驚いた覚えがあります。これが本学の特色であり、その伝統は今なお引き継がれています。
取材チーム:関西大学にとってはネットワーキングというほんとに入り口の話になりますので、すぐに具体的連携にはならないのかもしれませんが、もっとも関西大学らしいあり方なのかなと思います。
そのネットワークが、色々な研究成果を広めていっていただく端緒となればと願うところです。
杉本さん:校友会長にも先頭を切って加わっていただきます。(笑)
島貫さん:やっぱり日本の産業を支えているのは中小企業であって、次の世代の経営者が育たないというのは、社会構造そのものが崩れてしまうことに他ならないと考えています。そんなたいそうなことは出来ませんけど、重複しますが先の「塾」を続けていくことが、大阪に根付く大学としても意味のあることだと思います。
取材チーム:先ずは校友ネットワークを活用しながらも卒業生に拘らずに大阪のなかで企業家ネットワークを拡げる。そのうえで、個別具体的な経営課題やニーズに耳を傾け、地道に、しかし確実に、そして一緒になって解決を図っていきます。企業と大学の「イコール・パートナーシップ」、この覚悟に応えて頂ける経営者の方、是非お集まり下さい!